"The Diary of Alicia Keys"(2003) / Alicia Keys

Posted on

Amazon.co.jp: The Diary of Alicia Keys: ミュージック

彼女の2ndアルバム、2003年作。1

2003年の終わり頃でしたが、公式サイトで配信されていた、 #5.‘You Don’t Know My Name’ を聴いた時、あまりの良さに、誇張抜きで失神するかと思ったものでした。 甘茶仕立てのスムーズなリズム/アレンジ/ヴォーカル・ハーモニー、途中に挟まる甘い囁きの様な「語り」。 そう、‘70年代のソウル・ミュージックの様式を踏襲しつつ、Hip-Hop育ちらしい「ネタ感」の生かし方やビートの重さは勿論、主役の歌、メロディ、全てに於いて完璧な出来だったのですから。2

程無くして届けられたアルバムは、「アルバムが’You Don’t…‘級の水準なのだろうか?それともこれだけなアルバムだったら…」という期待と不安を、良い意味で軽くぶっちぎる完成度の高さ。 ‘70年代クラッシックの焼き直しではなく、その作品が持つ真髄に迫ろうとする彼女の心意気は、楽曲の隅々まで行き渡り、当時の数々の高名なトラックメイカー、Kanye West、Timbaland、Rich Harrison等々を迎えていながら、全くの「Alicia Keysの音楽」としか言えない統一感を生み出しつつ、聞き手には緊張を強いることもなく、何とも心地よい揺らぎを与えてくれているのです。

1stアルバム3にあった、あからさまなクラシック音楽臭さは控えられ、キンキンして少々耳障りだった高音部の歌声は、コントロールが行き届き、もう言うことがないですね。

後々、スタンダードになる #6.‘If I Ain’t Got You’ 以外にも、地味ながら'70年代テイストが溢れ出す #14.‘Samsonite Man’ 等々、全て聴き逃し厳禁というも言うべき一枚でしょう。

彼女が敬愛する、‘70年代の(所謂)「ニュー・ソウル」は、良くも悪くも偶然の産物と言うか、‘70年代の空気の中だからこそリアルに響いた、たまたまヒットして広く知られたからスタンダードになった。と言う側面が強いのです。 だから、その音作りをそのまま真似ても、当時と同じインパクトを聴く者に与えるのは不可能だと思うのです。 けれども、彼女は、それを正面突破でやってのけた、その事実に胸が熱くならずにはいられません。 自分たちはMarvin GayeもDonny HathawayもCurtis Mayfieldも、リアルタイムでは経験できなかった、でも今はAlicia Keysがいる、これ以上何を望む?そう言い切ってしまいたい程です。4


  1. The Diary of Alicia Keys - Wikipedia ↩︎

  2. 元ネタが The Main Ingredient - Let Me Prove My Love to You なので、当然なのですが。 ↩︎

  3. “Songs in A Minor”(2001) / Alicia Keys ↩︎

  4. 2007/04/07に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎