‘93年3rdアルバム1はリリース即、クラシック確定、その後の NY Hip-Hop の音作りを決定付け、しかし模倣者には決して辿り着けない、その品質の高さを称える評価は、日を追う毎に高くなり、 Q-Tip が Nas2 や Mob Deep3 等々クオリティの高い外仕事を連発し、その後、 The Pharcyde の傑作2nd4を手掛けた、新進トラックメイカー Jay Dee とプロデュース・チーム The Ummah 結成、と言う報が漏れ伝わり、期待は最高潮に達した時に、先行シングル #7.‘1nce Again’ がリリースされたのでした!!
「…え、えっ??」
余りに期待していた音と違ったためでしょうか、皆、少々戸惑い気味でした。 3rdアルバムの延長線上にある音ではなく、かなり断絶した音だったのですから…。 後、ストイックな音作りで定評のある ATCQ が、 Pop/R&B がメインの Tammy Lucas5 のヴォーカルを迎えていたのも一因だったのかもしれません。
程なくして届けられたアルバムは、先行シングルのような音で埋め尽くされていました。 皆、評価に困っていましたねぇ。 そう、2nd/3rdの「煤けた音質のビートに、えぐるように重いベース、上モノはメロウ」を、キッパリ捨て、「ビートはタイト、残響を切捨て、ベースは重いが、ビートと有機的に絡まない、上モノは柔らかい音色だが、デジタル処理された無機質な感触で、ベースやビートと有機的に絡まない」と言う摩訶不思議な音作りになっていたのです。 この、「各パートが残響を含まず、有機的に絡まない」と言う音作りは、現在では、極々普通になりましたが、このライミングのタイトさとマッチングを見ると、 ATCQ/The Ummah は更に一歩先に進んでいたのです。
後の Jay Dee (aka J Dilla)/Q-Tip の活動を振り返ると、これが最後の冒険だったのかな、と分かるのです。 個人的には ATCQ 史上、最もラップが緊張感に満ちていて、ビートとのコンビネーションも最高だと思っているのです。6