"Cosmic Slop"(1973) / Funkadelic

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前作1から引き続き、混沌と混乱の最中にあった、 George Clinton と Funkadelic 。 しかし、この1973年作、5th2こそ、その「らしさ」が明確になっていく、その第一歩だったと思うのです。

まず、Pedro Bellによるサインペン画のジャケット。 猥雑と悪意と諧謔と執拗さが、ないまぜになって整理されずに一枚に描き込まれており、これこそが、レコード盤に刻まれた音を、可視化する強力な武器となっていたのだと思うのですね。 その後、 P-Funk の基本テーマになる「宇宙とゲットー」も、ここで初めて披露されるのです。

そして、音楽面では、主翼 Eddie Hazel を失ったまま、前作で加入した筈の Bootsy Collins も一時脱退状態、という苦境を逆手に取り、メンバーを固定することで、バンドアンサンブルを固めることに(ある程度)成功し、「歪んだギターをファンクのリズムの上で鳴らし、ロックの攻撃性すら黒人音楽として飲み込む」という、 Funkadelic の基本路線を、アルバム一枚通して最初に意識したのが、この盤と言えるのでないでしょうか。 特に、前作から加入の Garry Shider が歌にギターに大活躍、 Tyrone Lampkin の粗くも腰の据わったドラム、 Cordell “Boogie” Mosson のゴツゴツしたベースが生み出すリズムが、前作とは段違いのグルーヴを生み出しているのが、音盤からも伝わってきます。

ギターが咽び泣き、低音のバリトン・ヴォーカルが、ベトナム帰還兵の苦しみを訥々と語る、 #3.‘March to the Witch’s Castle’ 、貧困から子育てのために売春をする母親を歌った #5.‘Cosmic Slop’ 、と言う、重苦しい'73年当時ならではの曲をかます一方で、女性器の俗称を曲名にしてコール・アンド・レスポンスを繰り返す、軽めのファンキーナンバー #1.‘Nappy Dugout’ 、軽いスワンプ・ロック調に合わせて漫談をする #6.‘No Compute’ 、そして、美しいソウルバラード #7.‘This Broken Heart’ が入り、渾然一体になり、よく分からないまま、一枚聴き終わるのです。

この、「すごいのかもしれないけど、なんだか騙されたのかもしれない」という感覚こそが、P-Funkなんだな、と、今になれば分かるのですが。 George Clinton が、そんな感覚を意図的に作り出したのは、このアルバムからでないでしょうか。 なので、もし何かのきっかけで George Clinton / P-Funk を知ったら、必ずこのアルバムを聴いて欲しいな、とか思うのでした。3

Funkadelic - Cosmic Slop


  1. “America Eats Its Young”(1972) / Funkadelic ↩︎

  2. Cosmic Slop - Wikipedia ↩︎

  3. 2009/05/11に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎