"Let's Take It to the Stage"(1975) / Funkadelic

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安定の「これぞP-Funk」。 1975年作。1

前のアルバム2を出すのと前後して、 James Brown のバンドから Fred Wesley / Maceo Parker を含む JB Horns を、 Sly & The Family Stone から、女性ヴォーカル部隊を引き抜き、 Bootsy Collins も復帰、若いメンバーも続々加入、と、メンバーが充実したところで、別動隊 Parliamemt が、 ‘Up for The Down Stroke’3 で、(まさかの)シングルヒットを取り、勢いに乗っていた頃の作品。

よく知られる話ですが、ジャムセッションを録音して、ミックスの段階で、楽曲を、 Parliamemt / Funkadelic / Bootsy’s Rubber Band に振り分けていたんですね。 このアルバムは、 Parliamemt の “Mothership Connection”4 、 Bootsy’s Rubber Band の “Stretchin Out…”5 と同時に録られた作品なので、とにかく、リズム隊/器楽演奏/ヴォーカル隊、全てに大充実な、傑作なのです。

Parliamemt / Bootsy’s Rubber Band には、ホーンセクション入りのポップな楽曲を振り分ける、と George Clinton が明確に意識したので、 Funkadelic には、ギターが唸り、ヴォーカルは重苦しくねっとりした感情を剥き出しにした、極彩色の毒々しい曲が集まることに。 特に、ヴォーカル隊がユニゾンで、コール&レスポンスを執拗に繰り返す #1.‘Good To Your Earhole’ は、のっけから衝天モノ。 同じように、ギターの執拗なアドリブの上で、ヴォーカル隊がワンフレーズを繰り返す #6.‘Get Off Your Ass And Jam’ は、 Funkadelic のマニフェストとも呼べる曲ではないでしょうか。

Bootsy Collins が、歌にベースに大活躍なアルバムなんですが、後の「ブーツィ歌唱」を確立した #3.‘Be My Beach’ は、部分的に ‘I’d Rather Be With You’ と同じフレーズが出てきたりも…。

Earth, Wind & Fire や Kool & the Gang、 Rufus & Chaka Khan を意地悪く揶揄するコール・アンド・レスポンスで展開するアルバム表題曲 #5.‘Let’s Take It to the Stage’ 、ゴスペル葬送歌のような #7.‘Baby I Owe You Something Good’ の重苦しさ辺りも含めて、ヴォーカル隊の充実さが際立つアルバムなのです。 Funkadelic の肝は、大音量の歪んだギターなのですが、それに真っ向から立ち向かう、詰め込まれまくった「うたぢから」こそ、このアルバムの聴きどころでしょう。 それは、原始黒人霊歌~戦前ブルース~ゴスペルを経て、リズミカルな掛け合いを繰り広げるヒップホップまで、導線引けるんじゃないかと思うのです。

難しい結論になりかけましたが、とりあえず、そのクリエイティビティの中に「諧謔と悪意と反骨と嫌味と狡猾」が、ぎっちり詰まっている一枚6。 こんなアルバム、作れるのは、当時の Funkadelic だけでしょうし、それが歴史的名盤になっているのも、奇跡的なことなんだなぁ、とか思いながら、その有難さを噛み締めたいものです。7

Funkadelic - Good To Your Earhole