確かに #6.‘Tell Me’1 は名曲です。 ハッキリ言って、22世紀まで残る曲、と言っても過言じゃないです。
ただ、余りにもその曲が突出しているので、「ただの一発屋」とレッテルを貼られかねない存在でもあります。 誠に残念ながら。
Hip-Hopユニット Mantronix2 のメンバーだった Bryce Wilson は、「コアを突き詰めた後のシンプルなポップス」をやりたかったんだろうし、 Amel Larrieux は、「多様な要素を吸収しながら拡散していくアーティスティックな音楽」をやりたかったのでしょう。 それは、 Bryce Wilson が当時手掛けた外仕事と3、後に出た Amel のソロ “Infinite Possibilities” を聴き比べれば自ずと明らかだし、これ一枚きりで空中分解してしまったのも必然かな、と言う気もしてくるのです。
だからこそ、異なる資質を持った二人のベクトルが一致した瞬間を封じ込めたこのアルバムは、とても魅力的だし、大好きです。 シンプルなトラックにキャッチーなメロディ、Amelの豊かな響きを含んだ声が自然に馴染んだ曲達は、よく聴けば ‘Tell Me’ 以外にも良質な曲、たくさんあるのですから。
上記は、Internet Archiveからサルベージしてきた'00年の文章なのですが、それから更に10数年経た今、彼/彼女が残した一枚が、その後のトレンドを、いかに正確に予言していたのか、それはもう自明でしょう。 例えば、 #8.‘Hello It’s Me’ は、 The Isley Brothers 経由で Todd Rundgren4 の「ソウル」を焙り出したものだったし、そこからAOR/ブルーアイドソウルの再評価に、‘00年代初期の(所謂)ネオソウルに、更には Chillwave / Vaporwave に、その導線引くのは、そう難しいことではないでしょう。5
あまり使いたくない言葉ですが、二人は「早過ぎた」のです。 その予言の数々を、当時の私たちは、全く受け止められなかったのですから。 だからこそ、中古屋で100円前後で投げ売られている盤を、今こそ拾って聴くべきなのではないでしょうか。
上記は2013年の文章。 今は2020年。 数年後この文章を読んだ人は、この音楽をどう聴くのでしょうか?6