これが出た当時、巷では所謂「Acid Jazz」なるものが大流行で、FMラジオから普通に Galliano や Urban Species なんかが流れていた時期でした。
‘Jazz Thing’ のスマッシュヒットを出した、 Guru & DJ Premier の Gang Starr も、そんな「Acid Jazz」「Jazz Hip-Hop」の括りで見られていて、だから Guru がソロで「オールスターキャストによるJazz & Hip-Hop」なアルバムを出した時、こっちでもかなり注目されたように記憶しています。 ただ、今からすると、その後Gang Starrは中途半端なジャズ路線をキッパリ捨てて、100%ピュアなハードコア路線へ移行することを考えると、 Guru は「ここでカッチリ区切りをつけよう」と思っていたのかもしれませんなぁ。
このアルバムは、大御所ジャズメン、 Hip-Hop にも理解のある若手ジャズメン、所謂「Acid Jazz」界隈のディーヴァ達を各々1曲毎にフィーチャー。
なんと言っても聴き所は、大御所ジャズメンの渋くも活き活きしたプレイ!! Donald Byrd の流れるようなトランペットとエレピの #2.‘Loungin’ 、強いタッチの生ピアノでスウィングする Lonnie Liston Smith との #6.‘Down the Backstreets’ 、フリーキーで鋭角的なマレット捌きがHip-Hopトラックとよく合った #8.‘Take a Look (At Yourself)’ の Roy Ayers 、素晴らし過ぎですね。 各々'70年代に当時の先鋭的なブラックミュージック=ファンクとジャズとの融合を試みていた彼らの意欲的な姿勢、それがいまだに衰えていなかったことを確認でき、それだけでもこのアルバムの価値はあると言えるでしょうね。
勿論、主役の Guru も全体のトラックをプロデュースし、硬いフロウで全体をビシッと締めてみせます。 ここでの Guru のラップは、ジャズのアドリブ同様、曲を引っ張り、グルーヴさせるための要と言えましょう。
「Hip-Hopであること」と「音楽的に高度であること」と「エンターテイメントであること」は、どれもが相反する要素のはずなのに、このアルバムではそのどれもが無理なく高い次元で成立していて、痛快ですらあります。 もし未聴なら、是非御一聴を。 1
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2001/08/22に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎