自分が何故 Leon Ware が好きかと言うと、どの曲にも「触れたら壊れてしまいそう、失うのは恐い、でも求めずにはいられない」と言う、堂々巡りの二律背反な命題が、水面下の水のように流れているからでしょうか。
彼が作った曲で一番他人にカヴァーされているのは ‘If I Ever Lose This Heaven’ / Quincy Jones1 だと思うのですが、このサビの歌詞が全てを物語っていると思います。
Oh, if I ever lose this heaven
If I ever, ever, ever lose this heaven
Oh, I'll never be the same
(この天国を失ってしまったら僕は正気ではいられないよ)
こう言う世界は、実は'72年の1stの時点で完成されていたことを、再発盤を聴いて気付いたのです。
このアルバムは、 Delaney & Bonnie2 の協力の元で作られたので、演奏、歌唱共々、全体的にゴスペル/ブルーズ/スワンプの色が強いのですが、それでもこの時点で、彼の後々の称号「メロウ大王」のテイストは、とめどなく表出しているのです。
特に #3.‘Why Be Alone’ や #6.‘What’s Your World’ などは、後の “I Want You”3 に入っていてもおかしくないと思います。
何より胸を打ったのが、彼の盟友となる、この時点ではその関係が始まったばかりの Auther ‘T-Boy’ Ross のライナーノーツの文章で、「人はいつも一人ぼっちで、寂しいから段々寄り添っていくけど、結局一人に戻っていってしまう。 結局私達は空しい駆け引きを繰り返しているに過ぎない。」と言う、Leon Wareの音楽に流れる無常観をかなり的確に書き(描き?)出しているのですから。
そう言った“世界”は、自作の曲が少ない'82年のアルバムでも揺るぎなく一貫しており、この人のセンスの深さ加減を、(今更ながらに)思い知ったりしています。4
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2003/09/25 と 2007/12/18 に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎