"Maxwell's Urban Hang Suite"(1996) / Maxwell

Posted on

Amazon | Maxwell’s Urban Hang Suite | Maxwell

‘96年の彼の1stアルバム。1

でも、今でこそ D’Angelo や Eric Benet らと並んで「ニュークラシカルソウル」を象徴する1枚として、それなりの評価を得ていますが、出た当初、きちんと理解されていた訳ではなかったのです。

  1. 「ストーリーを持ったコンセプトアルバム」と言うのが、当時のR&Bでは殆ど前例ないものだった。 それを、先行シングルも全く無い新人が、デビュー作に於いてほぼ自力で作り上げてしまった
  2. Hip-Hop Soul全盛の年に、Hip-Hopとの繋がりが薄かった。 艶やかでキラキラした、‘80s初期〜中期のブラックコンテンポラリーを思わせる音作りだった
  3. ファルセットの一人多重録音のハモリを軸にした歌の組み立て方

これら全てにおいて当時の主流(売れ線)とは異質だったのですから。2 今振り返ると、正直、プレスや音楽評論家もどう扱っていいか戸惑い気味でしたね。 ただ、楽曲の良さは光っていて、その後切られたシングルがどれもオンエアチャートで健闘したことが、それを物語っている、と言えますね。3

正直、難癖をつけようと思えばいくらでも可能なんです。 「‘80sの単なる焼き直し」「Marvin GayeとPrinceのコピーじゃない?」「似たような曲調ばっかりで飽きる」etc。 ただ、その音には、一旦はまると、憑かれたように最後まで聴き通さなければいられない、そして最後の #11"The Suite Theme" の余韻に浸りながら、またアルバムの先頭から再生してしまう、そんな魔力が潜んでいるのです。 それは、無駄なく洗練されている部分と、太く強くしなるグルーヴ感が、別ち難く結びついていたのですから。4

彼が、この後アンプラグドのライヴ盤を挟んで出す以降の作品は、この1stの延長線上ではあるけれど、新しいスタイルを模索しながら、と言う側面も強く、このアルバムのような、計算し尽くされた流れを持った作品ではないのです。

確かに、この盤の様な作品をファンも望んでいるだろうし、彼もやろうとすれば出来なくもない、でも、それをあえてしないのも、また彼らしい姿なのだろうなぁ、と、今になれば分かるのですが。5


  1. Maxwell’s Urban Hang Suite - Wikipedia ↩︎

  2. それは、ロウファイなHip-Hopビート全盛の'96年にあって、一番流行から外れていたのです。 ↩︎

  3. Maxwell - Sumthin’ Sumthin’ ↩︎

  4. この当時「男シャーデー」とか、よく分からない称号をもらっていました。 ↩︎

  5. 2002/07/24 と 2009/11/10 に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎