音楽千夜一夜物語 第十二夜 "The World's Greatest"(2001) / R.Kelly

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R.Kelly - The World’s Greatest

先日、会話の中で、Aaliyahの話が出たので、AaliyahかR.Kellyの話書こうかと思ったのですが、「そうだよね、もう20年以上前の話なので、前提条件から詳しく書かないとなぁ」とか考えていたら、萎え萎えに…。


‘90sの初期、私は大学生で、食費削ってCDとか音楽誌を買ってました。
その頃、R.Kellyは、歌手としても、プロデューサー/サウンドメイカーとしても、飛ぶ鳥を落とす勢いの存在でした。 でも実は自分、ホント嫌だったんです。 ペラペラな音と、どう聴いても同じメロ、なのに手掛ける曲、歌う曲が全部大ヒット、って嫌にならない要素がないだろ!!位の勢いでした。

例外が、Aaliyahの1st。 彼女の歌声は、ショウビズのギョーカイ的しがらみを全部洗い落としてくれる、慈愛に満ちた清らかさに満ちていたんですね。1


その後の'00年代前後、R.Kellyは色々裁判沙汰を抱えてまして、それはまぁ、音楽とは関係ないので割愛しますが。
でも、その間も精力的に曲を作り続けるんですけど、段々歌と、コーラスと、アンサンブルの豊かさに注力するようになります。 裁判沙汰で疲れた時に、幼少の時に叩きこまれたゴスペルを再発見した説あるんですが、まぁ、そんな感じでしょう。

で、モハメド・アリの伝記映画に提供したこの"The World’s Greatest"が決定打で、私もR.Kellyを見直し、掌返しここに極まれりとも言えるんですが、ちゃんと出るアルバムは買って聴くようになりました。

やはり素晴らしいのが、弦楽隊のアレンジ。 この曲は、Paul Simonの「恋人と別れる50の方法」のドラム/ベース/コード進行を下敷きに頂いているのですが、モータウンの全盛期を支えた、でも2001年前後の当時殆ど忘れられた存在だったPaul Riserを呼んできて、‘70sソウルのテイストを再現しているのです。 ここら辺の自分のルーツへの向き合い方は、本物のミュージシャンシップと呼べるものだったのでしょう。2


  1. Aaliyahの1stの素晴らしさについては、またどこかで書くかもしれません。 ↩︎

  2. 2015/10/11 に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎