音楽千夜一夜物語 第二十五夜 "Boy, You're Dynamite"(1976) / Jackson Sisters

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Jackson Sisters - Boy, You’re Dynamite

はいな、‘90sに「レア・グルーヴ」と言うムーブメントがありましてね。 「最新型のマシンビートじゃなくて、古臭いけどファンキーなソウルやジャズで踊ろうぜ」と言う、ひねくれた英国人のスノッブな方々が始めた、アンダーグラウンドな草の根運動でしたが、結果的に大きな流れになり、本場の米国の黒人音楽にも大きな影響を与えるまでになりました。
その中で、再発見され、激レアだったのに再発やCD化を経て、誰でも知る有名盤になったのが、Jackson Sistersのたった一枚のアルバムです。

こっちの方が有名かもだけど、私は"Boy…“の弾むようなノリが好きなんですよね。


Jackson SistersのLPが、何故あんなに高いクオリティなのに、あんなにレアだったのか、最近知ったのです。
このアルバムを出している Tiger Lily Records は、親会社の租税回避/脱税用に、帳簿上の赤字を計上するためだけに、レコードを作っていたのです。 こう言うのを"Tax Scam Record”(税金ごまかし盤)と呼び、‘70sにはすごく多かったらしい、のですが…。 売れたら利益になってしまうため、アリバイ作り程度の量しか市場に出回らない、当然レア盤化してしまうわけです。

Tiger Lily Recordsは、脱税のためだけに作られて、1976年だけ存在し、23枚のアルバムを出しました。 その総て、どれも、マニアが血眼になって探しているレア盤ばかりです。
そんな帳簿の辻褄合わせだけなら、手抜きの音作りでもいいじゃん!!と思うのですが、この年のTiger Lily Recordsの出すアルバムは、どれも芳醇で豊かな音楽性を兼ね備えたものばかり、と言うのが業の深いところです。

結論としては、「カネと欲望で作られたどうしようもない現実から、ダイヤのような輝きを持つ表現が生まれることもある」でしょうか。1


  1. 2016/05/23 に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎