音楽千夜一夜物語 第六十三夜 "Juicy Fruit"(1984) / Mtume

Posted on

Mtume - Juicy Fruit

マイルス・スクール卒業生とソウル/ファンク その21

Mtume(エムトゥーメイ)の話は、前回もちょっと書いたんですが、1975年の、 Miles Davis の引退とバンド解散を契機に、バンドメンバーだったJames MtumeとReggie Lucasが、バンドMtumeを組みました。

二人が作る出すサウンドは、まさにNYの週末のキラキラした豪華な雰囲気、でも引き締まったダンサブルなグルーヴ、唯一無比、独自の音楽でした。2


紆余曲折あって、盟友 Reggie Lucas はバンドを脱退するのですが。 その後放った、渾身の一撃が、この “Juicy Fruit” なのです。

ゆるく繰り返されるリズムマシンのパターン、でもボトムはしっかりしていて、ふわふわしたシンセが、ビートの間を縫う、歌だけが楽曲の根幹を支える。 …と言う、謎な音楽構造。 でも、ヒットし、売れて、この後、模倣のヒット曲を数多く生み出しました。

“ブラック・コンテンポラリー”、(所謂)「ブラコン」のハシリとも言えますし、その後、このビートをサンプリングして、Hip-Hop/R&Bでリサイクルされるのは、このビートの中毒性の証明とも言えます。3

James Mtume は、ドラム/リズムの探求者であり歌も歌えてピアノも弾ける、と言う人なので、こういう音像/アレンジに行き着いたんだろうなぁ、と今になっては分かるのですが。

とは言え、この楽曲は最終的に、リードシンガー、Tawatha Ageeの「歌唱スキル100%、パッション200%、情念500%」な歌声の賜物なんでしょうね。4


  1. 前回はこちら “Starlight”(1979) / Stephanie Mills ↩︎

  2. Mtume - “Give It on Up (If You Want to)” ↩︎

  3. The Notorious B.I.G. - “Juicy” とか、もしや原曲よりも有名だったりするかもしれません。 ↩︎

  4. 2018/06/05 に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎