Pete Rock & C.L. Smooth の2ndアルバムにして、実質的なラストアルバム、1994年作。1
今の耳で聞くと「…ちょっと古い?」どころか、古色蒼然とした印象も受けるでしょう。 そんな感じは拭えないものの、この盤が、‘90年代半ば迄のHip-Hopの最高傑作である事実は揺るぎない、と、そう思いたいのです。
元々、サンプルのループに手弾きの演奏を混ぜたりして、「音楽的」だったPete Rockの音作りスキルはこの'94年作で一層の進化と深化を見せ、発売当時「これはHip-Hopを超えたレベルまでたどり着いた」とか話題になったものでした。
確かに Pete Rock 自身、「普段Hip-Hopを聴かない大人にも聴けるようなものを作りたい」みたいな発言を繰り返していて、事実アルバム後半は、かなりメロウ&ソウルフルな、‘70年代のニュー・ソウル/クロスオーバー・ジャズ/プレ・フュージョンを思わせる音作りになっていたりもします。2 3
…とは言え、やっぱり「らしい」のは、エッジの効いたビートにゆるいスクラッチが絡んだ #2.‘Carmel City’ / #3.‘I Get Physical’ / #5.‘I Got A Love’ でしょうか?
勿論 C.L. Smooth のラップは、どの曲でもタイトかつ滑らかかつ練り上げられていて、完璧。 基本的に「特別主張する」タイプのMCではないけれど、ひたすらビートに寄り添い、上モノの一部として楽曲に「うたごころ」を与えていく、その使命ためには、マイクを決して離さないのです。4 この直後二人は決別してしまうのですが、その後の Pete Rock の作品を聴く度、「 Pete Rock の音は、このラップがないと完成しないんだな」とも思ったりもします。5
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The Main Ingredient (Pete Rock & CL Smooth album) - Wikipedia ↩︎
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実際に、‘70年代音源からのサンプルで固められています。 The Main Ingredient by Pete Rock & C.L. Smooth: Album Samples, Covers and Remixes | WhoSampled ↩︎
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例えば、 #3.‘Sun Won’t Come Out’ では Bob James - Nautilus をサンプリングしているのですが、定番のビート部分ではなく、エレピ/ストリング部分を使っている辺り、当時は斬新だったのです。 ↩︎
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音楽を届けるため、言葉を選んで、アルバムに Parental Advisory のシールを貼られることを回避しているのです。 ↩︎
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2001/09/23 と 2011/08/29 に書いた文章に加筆訂正しました ↩︎