これ、個人的には、初めてリアルタイムで買ったRod Stewartのアルバムなんですが、それはかなりラッキーじゃなかったか?と思える程、良くできた一枚なのです。
ベスト盤用に録音された #4.‘Downtown Train’ が、思いの外好評だったことを受けて、かなり急いで作られたはずのアルバムなのですが、これが、彼の音楽のルーツ三つの柱「アイリッシュルーツ」「‘50sロックンロール」「‘60sソウル」1を、バランス良く、しかもコンテンポラリーでソリッド、かつ無駄の無い音作り2で再現されていて、主役である歌い手も、水を得た魚のように、伸び伸びと歌っているのです。
アイリッシュ+ロックンロール+ソウルの先輩格 Van Morrison の #2.‘Have I Told You Lately’ 、同世代のフォーク/ブルース/ロックを根本に持つ同志 Tom Waits の #4.‘Downtown Train’ 、Robbie Robertson(The Band) の #3.‘Broken Arrow’ における、真摯な歌心炸裂には、じんわりと熱くなりますし、Tina Turner とハスキーな声で渡り合う #9.‘It Takes Two’ 、しみじみと歌われる #10.‘You Are Everything’3 、Temps を迎えて、ドゥワップを楽しそうに歌う #11.‘The Motown Song’ には、「ブルー・アイド・ソウル」の第一人者としての、底力が、ここぞとばかりに露になります。
これ以降、世界の音楽の中心は、デジタルなR&Bや、ささくれ立ったオルタネイティヴロックの時代になって行き、彼は、メインストリームのロックとは距離を置くようになります4。 そんな彼の、最後の「ロックがポップだった末期」の置き土産、今聴いても、すごく楽しいのです。5