"Vagabond Heart"(1991) / Rod Stewart

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これ、個人的には、初めてリアルタイムで買ったRod Stewartのアルバムなんですが、それはかなりラッキーじゃなかったか?と思える程、良くできた一枚なのです。

ベスト盤用に録音された #4.‘Downtown Train’ が、思いの外好評だったことを受けて、かなり急いで作られたはずのアルバムなのですが、これが、彼の音楽のルーツ三つの柱「アイリッシュルーツ」「‘50sロックンロール」「‘60sソウル」1を、バランス良く、しかもコンテンポラリーでソリッド、かつ無駄の無い音作り2で再現されていて、主役である歌い手も、水を得た魚のように、伸び伸びと歌っているのです。

アイリッシュ+ロックンロール+ソウルの先輩格 Van Morrison#2.‘Have I Told You Lately’ 、同世代のフォーク/ブルース/ロックを根本に持つ同志 Tom Waits#4.‘Downtown Train’Robbie Robertson(The Band)#3.‘Broken Arrow’ における、真摯な歌心炸裂には、じんわりと熱くなりますし、Tina Turner とハスキーな声で渡り合う #9.‘It Takes Two’ 、しみじみと歌われる #10.‘You Are Everything’3Temps を迎えて、ドゥワップを楽しそうに歌う #11.‘The Motown Song’ には、「ブルー・アイド・ソウル」の第一人者としての、底力が、ここぞとばかりに露になります。

これ以降、世界の音楽の中心は、デジタルなR&Bや、ささくれ立ったオルタネイティヴロックの時代になって行き、彼は、メインストリームのロックとは距離を置くようになります4。 そんな彼の、最後の「ロックがポップだった末期」の置き土産、今聴いても、すごく楽しいのです。5


  1. “Songbook"以降の「スタンダード」「ジャズ」は、これらの、更にルーツ探求ではないでしょうか ↩︎

  2. アレンジの主役はTrevor Horn / Richard Perry ↩︎

  3. Diana Ross & Marvin Gaye を下敷きにしているのでしょう ↩︎

  4. 距離を置いたが故の、“American Songbook"シリーズが、毎回チャート上位の常連になっていくのは、皮肉とも言えますが… ↩︎

  5. 2012/05/03 に書いた文章に加筆訂正しました ↩︎