プロデューサー集団 The Ummah の一員として知られる Jay-Dee aka J.Dilla 率いる Slum Village の1st、2000年作。1
Jay-Dee は、アルバムをトータルでプロデュースできる力量とバランス感覚を持った人でもあり、また、バックビートのスネア一発で「あ、Jay-Deeっぽい」って思わせる個性的な音作りをする人。 Janet Jackson - Got ‘Til It’s Gone を聴けば分かる通り、ネタだけに頼っている人ではないけれど、音の断片からのぞく引き出しの多さは尋常ではなく、豊富な知識とアイデアを生かす鋭いセンスの持ち主でもある、と。 早い話、この人の作るトラックには抗えないってことなのです。
このアルバムの前に出た Jay-Dee が全面的に仕切った Q-Tip の “Amplified”2 は、恐ろしく密度の高い作品だったけど、続けて何度も聴くには少々つらい作品でもあったのです。 その点、この “Fantastic, Vol. 2” は、メロウでクールで、浮遊感多目な音作りが中心。 結構聴き易いのですが、シンプルで輪郭のハッキリした硬質なビートは健在なのは流石ですね。
ラップも、パーティラップというか、少々コミカルなフロウで、肩が凝らない感じで。 Jay-Dee 仕事をずっとチェックしていたら、たまにはこういうのも、ね、という気分に…。
Busta Rhymes をゲストに迎えたディスコっぽい #8.‘What It’s All About’ 、Q-Tip を交えて ATCQ の延長線のような#6.‘Hold Tight’、 D’Angelo のファルセットがまったり漂う#7.‘Tell Me’、 Jazzy Jeff のコスリで JB の声をラップに合わせて次々とハメる#2.‘I Don’t Know’ 等々、ゲストの生かし方もお見事ですね。
上記は、Internet Archiveからサルベージしてきた2001年の文章なのですが、それから20年近く経って、彼のビート感が、ポップやジャズに及ぼした影響の大きさを考えると、この一枚の遠投さ加減、当時は誰もシリアスなものとして受け止められなかったのです。 故に、着弾した時の衝撃と影響力の大きさ、今こそ聴き返すべき一枚と言えるのではないでしょうか。3
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2001/06/08 と 2012/04/18 に書いた文章に加筆訂正しました ↩︎