"The Anthology"(1981) / Sly & the Family Stone

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まず「Sly Stone / Sly & The Family Stoneとは何者か?」「‘60年代とは何か?」「“ファンク”とは何か?」を知りたいなら、この盤を聴くべきだと思うのです。 と言うか、この盤は、 #12.‘Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)’ と言う、黒人音楽の金字塔を打ち立てるまでの過程と、その後の、その重責に苦しむ一人のミュージシャンの苦悩、を分かりやすく描き出してくれる、この上なく優れたドキュメントなのです。

知的で野心的で音楽知識豊富だった一人の黒人男性、Sylvester Stewartが、当時の(所謂)「ヒッピー・ムーブメント」「公民権運動」に、感化されつつも、うまく乗りこなしながら、大衆の力を扇動しつつ、新しい音楽を編み出し、時代のスターへ上りつめる過程が、#1.‘Dance to the Music’ から #11.‘Hot Fun in the Summertime’ に、そして、最も輝いていたいた時代の、渾身の一撃が#12に、そして急激に力が萎えてしまいながらも、持ち前のミュージシャンシップでなんとかしようと(惨めにも)抗いながら、力尽きてゆく過程が #14.‘Family Affair’ から #20.‘Que Sera, Sera (Whatever Will Be,Will Be)’ に、と、この1枚に明示されていると思うのです。

それにしても、#12の「スラップベースを核に、4リズム(ドラム/ベース/ギター/鍵盤)+管楽器が、互いに主張したり引っ込んだりをしながら、一体となってリズムを刻み続ける」と言う、ファンクの基本パターンの出発点にして、最終型のような演奏スタイル。 これがクリアかつソリッドな音質で聴けるだけでも、この盤の価値はあったと思うのです。1

Sly & The Family Stone - Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)


  1. 2007/06/22に書いた文章に加筆訂正しました。 ↩︎